【八十神の舞】神々の舞う地、神代市を舞台につむがれる物語。

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2009年05月30日

【八十神の舞】設定集

家康Jrさんの作品、ストームガールのスピンオフ作品を書かせていただく事になりました。
その設定を紹介させていただきます。


■舞台
 帝都から電車で一時間ほど離れた都市、神代市(カミシロ・シティ)。中心市街地から少しでも離れるとのどかな田園風景がひろがるいわゆる地方都市である。だが無駄に土地が広い分、帝都に本社を置く海外企業の進出が近年増え続けている。
 この土地はもともと帝都にとって不可侵の暗黙が存在していた。しかし、上層部の腐敗が様々な勢力の介入を許してしまう。


■進出してきた企業等
 ハンター協会、他。


■潜んでいる勢力
 真国家統合政府、他。

■保安機関
 1つは、帝都防衛軍ヤマツミ。山津見八神将の一人がシティを預かり警備している。こちらも上層部の腐敗は末端まで進んでおり、市民と衝突することもしばしば。
 そしてもう一つが世界共通の組織であるハンターである。ヤマツミに賄賂を払ったり、掠奪まがいの事をされながら中途半端な仕事をされるのなら、ギブアンドテイクで動くハンターに依頼する市民がいるのも事実である。そのため、ヤマツミとの衝突は避けれられない状況に陥っている。


■主要な施設
●神代学園
 シティ公営の学園。小等部、中等部、高等部までの一貫校。公官庁に勤める親を持つ者がその大半を占める。試験難易度はかなり高いが、賄賂を払えば試験もなく裏口入学が可能である。

●霞ヶ浦高校
 通称カス校。しかしそう云うのは神代学園の生徒のみ。中流階級とそれ以下の者達が大半であるため、神代学園の生徒とはいつも衝突している。

●路面電車
 神代シティと帝都を結んでいる本線と、シティ内を回り続ける環状線の二つがある。市民の移動手段の中心であり、要でもある。

●専門書カフェ思兼(オモカネ)
 専門知識を必要とする者達の集まるカフェ。表向きは様々な一般的な文献を置いているカフェに過ぎない――それでも帝都図書館並みの稀少文献が揃っている――が、カウンター脇の会員ルームの中には全世界のあらゆる書物がおさめられ、世界でここにしかない書物が多数あるとの噂である。

●雷屋デパート
 シティの中心市街地にある老舗デパート。最近、外資系郊外型店舗におされ気味で経営が悪化してきている。

●バー・unknown
 神代シティ唯一のハンターが集まるバー。シティ内の情報の全てが主人であるバーテンダー、轟大吾のもとに集まってくる。しかし、決して直接的な情報として彼の口から語られることはなく、謎かけとして与えられる。ちなみに代価は情報で支払う事になるため、自分の持っている情報量が少ないほど謎かけの難易度は上がる。


■個人・団体
●神代御三家
 新堂、御名神、倉本という三家族をさす。かつては帝都の政治に大きく影響を与える存在であったが、今では帝都から退き神代シティ内にていち市民として暮らしている。

●真国家統合政府
 この世界に最も脅威とされるテロリスト組織「真国家統合政府」について説明する。「真国家統合政府」は「戦いの中にこそ、真の平和がある」という信条を掲げ、世界各地であらゆるテロリスト活動を行う。この世界は国家間の戦争のない平和な世界になったとはいえ、その実態は完全競争社会で貧富の差や失業労働者など後が絶たない世界であり、さらに、「真国家統合政府」が存在する以前からテロリスト活動を行う者が後を絶たないという事実があり、だからこそ、国家間の戦争がない今の平和な時代にもハンターという危険な職業が必要とされている。これがはたして、真の平和になるのだろうか?と二十年前の大戦の英雄・藤堂平三郎は葛藤する。そして、現在から十年前、藤堂平三郎は戦争のない世界で行き場のなくなった兵士や、飢えに苦しむ貧民、失業労働者、社会復帰のできない元犯罪者などから構成される「真国家統合政府」を立ち上げ、今の世界の国家構造を壊し、自分達が真の国家を創る者であると名乗り上げる。皮肉にも、「真国家統合政府」は戦争や闘争のないこの世界の負の面を表している組織であるともいえる。
(家康Jrさんより引用)

●大江戸武士団
 東の国・ジパングの主力部隊だったが、セブンカードの手によって壊滅させられた。
(家康Jrさんより引用)

●妖怪軍団
 ジパングに拠点を置く魔物の集団。(家康Jrさんより引用)

【八十神の舞】第一章 天狗舞『第一話 仔猫と日常』

「みずかみ! みずかみ! みずかみあやめっ! 何故返事しない!」

 少しずつ苛々を募らせる教師の声が教室に響く。しかし呼ばれた彼女――水上あやめは一切反応しようとしなかった。まだ一限目の出席確認。居眠りをするには早い時間だ。明らかな故意でもって返事をしようとしなかった。

「みずかみ! いないならお前は何だ! 返事をしないなら帰ってしまえ!」

 顔色をどす黒くさせながら日誌の角を握り締めにかかった中年の冴えない教師は、いよいよ何事か起こしかねないわななきをその全身にみなぎらせてきたのを一瞥し、ようやく彼女は口を開いた。

「あたしはみずかみじゃありません。みなかみです」

 落ち着いて、しかしキッパリ言い放った彼女の夜色の瞳に見据えられ、一瞬どきりとした教師は次の言葉をつなげなくなっていた。刹那の沈黙の後、しどろもどろの言い訳を自分の少ない威厳をかき集めて言い放つと、中年教師は授業を開始したのであった。


「やるねぇ~あやめ」

 授業が終わり、からからとした声が背後から飛んでくる。

「あんたの知らんぷりで十分稼いでくれたからねぇ~
 アイツの授業ほど面白くないものはないからね」

 彼女の名は梨花・エリスン。家の方向が同じなため神代学園高等部に入学当時から仲良くしているクラスメートだ。あやめが漆黒のなめらかな髪なのに対して、彼女は輝く黄金色の髪に金褐色の瞳という対照的な特徴を持った、帝都でも珍しいハーフであった。

 それに対するあやめはしれっと言い放つ。

「別にいつものことじゃない。あたしが自分の家を大切にしているってことを知らないアイツが悪い。だからいつまでも平教師なのよ」

 意地悪く、皮肉たっぷりの物言いではあったが、そのころころと表情を変える夜色の瞳から悪戯っぽい笑みがこぼれているのに気付くと、ほとんどのひとは彼女を許してしまう。そんな魅力をあやめは持っていた。

「ホント、相変わらずね。まぁ、いいわ。今日の放課後は空いてる?
 ジョイフルに寄って帰らない? ここからなら環状線で二駅じゃない。どう?」

「梨花ゴメン。今日もお祖父ちゃんの所でバイトなの」

「あぁ、神社の? あの巫女さんのユニフォーム可愛いよね。私も着たいな~」

「じゃぁ一緒にやってみる?」

「パース! 駄目よ。私は金髪金目じゃない。似合わないわよ。私が着たらコスプレにしかならないわ」

 こんな軽快な会話をしながら廊下を並んで歩く姿は、同級の男子のみならず、女子達にも注目の的となっていた。
 そう、一言で言えば、この二人はとても目立つ容姿をそなえた、いわゆる美人に属するそれであった。
 この神代学園において――少なくとも梨花・エリスンはネオトキオ大使館に勤める外交官の父を持つエリート階級。しかも美人である。他の生徒の受けは良かったがその他と異なる容姿がはじめは彼女を独りにさせていた。しかし、そんな様子に自然と入り込み、今や梨花の第一の友人になり得たのがあやめであった。あやめ自身も他の生徒と変わらぬ黒目に黒髪であったが、つり目ながらもころころと表情を変える瞳とびろうどの様ななめらかな長髪が一線を画する容姿に吊り上げていた。だが梨花と異なり、彼女は祖父の神社でほぼ毎日の放課後をアルバイトで過ごすいち小市民でしかなかった。そのでこぼこの部分が一部の生徒達を熱狂させ、また羨望の的とさせていたのであった。当人達は迷惑としか思っていなかったのだが。
 かくて、この神代学園における現アイドルは青春の一幕を謳歌していたのであった。


「で……結局ついてくるわけね……」

 若干頭を抱え気味だが、以前から事ある毎に巫女のお仕着せを着たがっていたのを知っていたあやめは梨花とバイト先――祖父が宮司を務める神社にやってきていた。

「どう? どう? 似合う?」

 子供の様にはしゃぐ梨花を見て、少しばかり羨ましいと思っていたが、更にそれにダメ押ししてくれたのが、自分よりも少しばかり満ち満ちている胸のふくらみであった。

「どうせあたしは発展途上中よ」

「え? なに?」

 心のつぶやきが梨花に聞こえたのかとどきりとしたが、すぐになんでもないとそっぽを向いたあやめは少しばかり口を尖らせていた。それを知ってか知らずかはしゃぎ続ける梨花を他のバイト巫女に預け、あやめは一人本殿へと歩き出していた。

 まだ夏と言うには暑くなく、春というには日差しが強かった。新緑に彩られた桜の木。その木漏れ日を受ける本殿へと空の青さを感じながらあやめは歩いていた。

「……」

 何かが聞こえた。

「……」

 はじめは空耳かと思っていたが、確かにあやめの耳に何かが聞こえていた。

「……にぃ」

 か細く、消え入りそうなその声が、泣き声だと気付いたのは、本殿の床下を覗き込んだときであった。

「猫?」

 小さくて、ぼろ雑巾の様にみすぼらしく汚れきった仔猫がそこにいたのだ。
 あやめがゆっくりと手を出すと、その仔猫はよたよたと小さな身体を左右に揺らしつつ、どうにか彼女の指先に触れんばかりまで近づいてきたのだった。
 普通、野良猫ならこうもいかず警戒して逃げ出しそうなものなのに、まっすぐ――ふらついてはいたが――あやめにむかってきたのであった。

 そして、あやめの手の中にころりと転がりこみ、動かなくなったのだ。

「お、おじいちゃん――」

 声と一緒に体が弾かれるように動き、小さな消えようとする命を両手でやさしく包み込みながら宮司である祖父のもとへと走り出したのであった。


(つづく)


【八十神の舞】序章


 炎があった。
 気付いたとき、彼女――水上あやめの眼前には轟々と燃え上がる神社の境内が浮かび上がっていた。

「なっっ……」

 一瞬、言葉にならない声を漏らした彼女だが、すぐさま周囲を見回し、自分のおかれた状況の確認を始めていた。
 若干十七歳でしかない、いわゆる女子高生であるのに、落ち着き払ったその行動に大人を感じずにはいられなかった。

 ゆっくりと立ち上がる彼女の傍らには、彼女を気付かせてくれた者達が鎮座している事に気付くと、大人を何処かへ置き忘れ、次の瞬間には怒鳴り始めていた。

「アンタたち、いったい何をやってるのよ!」

 そこにいた三匹の猫たちは、この炎上する状況におかれてなお怯える様子もなく、じっと彼女をみつめていた。

「ったく……。まぁいいわ!
 このままじゃあ住むところが無くなっちゃうからね。
 アンタたち、協力しなさいよ!」

 火事場に猫の手が如何ほどの助けになるのか――彼女は真顔で言い放つと、一番燃え方の激しい本殿へと走り出した。
 そしてそれに迷いもなく続く三匹の猫たち。この異様ともいえる光景だが、それを見ているのは我々高天原の住人だけであろう。

 異様な光景は未だ続く。

 本殿の扉を蹴破り、一気に本尊まで駆け寄ったとき、そこに一組の男女がいたのだ。

「あれぇ……随分はやかったなぁ~」
「ふむ、仕方ないさ。予定は狂うために在る様なものだ」
「まぁ、そうだけどさぁ~」

 あまりに落ち着き、またあっけらかんとした何処か春の公園で交わす雑談よろしい会話に彼女は一瞬引きつるも、激して言い放った。

「この火付け盗賊が!
 よくもあたしの家に火をつけてくれたわね!」

 しかしそれに返ってきた声はどこか緊張感を欠く物言いであった。

「ごめんねぇ~あやめちゃん。
 どうしてもここの御神体が必要だからさぁ~」

 云われて彼女はようやくあることに気付いた。

 この声、この話し方。

 いつも彼女を助けてくれた敬愛する年上の従姉……

「あずみ姉ちゃん……」

 炎の中で無防備に立ち尽くしてしまった彼女の頭に過去の記憶が一気に流れ出す。

 かつて、本家を出奔し、分家の娘である水上あやめが神社の守人となるに至った張本人。
 御名神(ミナカミ)あずみがそこにいたのだった。

「い、今更、なんで今更!」

 嬉しさは怒りに裏返り、記憶は悲しみへとすり替わる。いまのあやめにはそれ以上の言葉にはならずにいた。またあずみにしても同様の感情があらわれていたのかもしれない。刹那の無言があり、男がそれを言葉にして続けてのだった。

「スマンな……全ては創世のため……」

 男にも見覚えがあったがすぐに思い出せない。
 そして思い出すより早く、炎が本尊と彼らの全てをおおい尽くしたのだった。

 炎の中より声だけが響く……

「また会おう、新たな御名神よ。神道の果てて待っている」

「シン・ドウ?」

 言葉の意味を解する前に、眼前から突き上げてきた衝撃波があやめらを本殿の外へと弾き飛ばしたのだった。と同時に本殿そのものが一瞬にして蒼白く燃え上がり、次に目を開いたときには灰しか残っていなかった。

「シン・ドウ……」

 全てが灰になり、ようやく彼女は気付いた。
 彼女の前に立ちはだかったのは、新堂と御名神。
 神代御三家の長子のうちの二人である事に……

「いった、い……
 いったい、何なのよ――!」

 物語は、ここからようやく始まる――


(序章 了)

2009年05月15日

王道のエッセンス(29)【秘密は蜜の味】

前回は秘密の王女でしたね。

で、今回は秘密、と。

誰でも秘密はもっています。
でも、それは独りで抱え込むもので、あまり密の味とも言えません。

ですが、これがその秘密を知るものが複数となったとき、仄暗くも甘美な魔力を放ちはじめます。

そしてその一番の恩恵に与れるのは傍観者(読者)なんですよね。

・なんでそこで気づかないんだよ!
・アンタ今一言多くいってたらバレてたよ!
・そんな不用意に冗談のネタで秘密を口走るなよ!
・この秘密、ここでバレちゃったらどうなるんだろう?

あれやこれやと思い浮かべたり、それを肴にコミュニティができたりするでしょうね。

とはいえ、その秘密がちっぽけでもいけない。
一つバレれば世界を大きくかき回すようなリスキーな秘密ほどいいかもしれない。

う~ん。魅惑の輝きを放てる秘密。
どう醸し出すかなぁ~



(つづく)


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2009年05月01日

王道のエッセンス(28)【秘密の王女】

【秘密の王女】

また、王女様に話題を戻します。

王女様のなかには隠された秘密の王女がいますね。

まぁ、王女様に限ったことではないのですが、本人すらその事実を成人するまで知らなかったというパターンがほとんどでしょう。
まぁ、いずれにせよ身分を隠されているが、実は国を揺るがすほどの存在足り得るでしょう。

神々(作家)達としては、そうさせる期待を人々(読者)に持たせながら先に延ばし、なるべく劇的な展開の時に使う一手にしたいところです。
主人公やナレーターに、『この縁が後々この国を救うことになるだろう』的な予言を語らせるのみにして、ね。

とはいえ、この手の王女様にも何パターンかがあると思います。

よく使われるのは、男装の麗人。盗賊や海賊なのに気品がある。王位や国民よりも魔道に身を落とす。動物や魔女に育てられる。敵や暗殺者の手で育てられる。

まぁ、いろいろありそうです。

さてさて、どんな秘密の王女がいいかしら。



(つづく)


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王道のエッセンス(27)【傭兵王の誕生】

【傭兵王の誕生】

さて、転機をモノにすることができた彼は、更に階段をのぼり続ける。
彼にはそれが血のカスケード(流水階段)で あることがわかっていた。血は今まで倒してきた幾多の敵だけではなく、自分を慕ってついてきた者達のそれすらあった。彼は時に立ち止まりたくなる衝動に駆 られる。だが、のぼり続けるほか無いのだ。今まで流れていった血の一滴をも無駄にしないために。

そうして、ようやく頂点へとたどり着いた。

いや、正確には最上段に片足を踏み出しただけなのかもしれない。
その帰趨はこれからの彼の行動や心がけ次第となるだろう。

傭兵の身から数多の冒険の果てに、馬鹿にさえしていた吟遊詩人が奏でるサーガの主人公とすら成り仰せた希代の成り上がり者。
自らの力のみではなく、運命の神が紡ぎ出す模様を形作る一本の糸の魅せた鮮やかな色合い。

様々いわれようと彼は彼でしかなく、野望の叶った先は見えていなくもある。

彼がこの先、王を続けるのか、きままな傭兵家業にもどるのか、いまはまだ彼自身すら混沌とした心の内を扱いかねているのであった。


(つづく)


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