【Real-Side】『プロローグ』
それは、一人の少年の素朴な疑問から始まった。
「幽霊って、本当にいるの?」
その問に、大人達は笑い飛ばし、あるいは本気に受け取らず、冗談めかして『いるいる』と、やはり笑っていた。
本気にしない大人達を後目に、少年はただひたすらに本を読みあさった。
新旧の〈聖書〉、黙示録と呼ばれる数々の〈予言書〉、天使と悪魔が描かれた〈物語〉の数々、毛色を変えて〈精神医学書〉や〈科学雑誌〉……
挙げればきりが無いほどである。
しかし、少年にここまでさせるエネルギーの源とは一体何なのだろうか。
答は簡単、少年は見たのだ。
〈幽霊〉を……
いや、それは厳密ではないのかもしれない。
少年が選ぶ書物には何故か西洋的な幽霊、いや〈精霊〉が描かれていた。
猛禽類の様な翼と光輪を頭上に戴いた姿の精霊が……
おそらく無意識のうちに、書物に描かれた挿し絵と自分が見た者を重ねていたのだろう。
そして、少年はそれを知りたいと思ったのだ。
見た物を解き明かそうとするエネルギーと少年の興味は、次第に〈霊的な者〉の科学的解明へと転じていった。
そして二〇余年、少年は自分を笑い飛ばしていた大人達と同じ、大人となっていた。
少年は少年の心を失わず、霊的な者の別なカタチを見つけ、世界に貢献する事となった。
〈宇宙開拓航行システム〉……
人が地球の外へ出ていく為のシステムを図らずも完成させてしまっていたのだ。
これは、人の精神をデジタル信号化させ、一個の独立した、自我を持つプログラムとして、新たな人類へと進化するシステムだった。
少年は、霊的な者とデジタル化された精神体とは、同義の存在であると考えていた。そして、狭くなった地球で生活できる
と思い、〈地球内地球環境適応システム〉として、〈デジタルワールド〉を創造り上げた。
しかし、周囲の人間は汚染され尽くした地球を捨てようとしていた。そのため、少年の作り上げたシステムは、周囲の者達にとって渡りに舟、効果的な代物として映ったのだ。
そして、少年のシステムは流用された。
世界は、少年が想い描いた光景とはかけ離れ始めた。
システムは奪われ、組織の歯車の一つとなった少年は、もう希望を失っていた。
今はただ、システムのテストを行うために、哀れな生け贄をナビゲートするだけであった。
(第一話につづく)
アルファポリスの
『第二回ファンタジー小説大賞』
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