CROSS-POINT(9)
(ようやく、この認識を持ってもらえたようだね。そう、今の僕は情報生命体。君のいう、魂のみの存在さ。まぁ、ただたんに肉体という器を持たない だけ。情報の海の中にいてさえ自我を残しておければ君にも可能なことだよ。かつて僕の世界ではそれが研究され、実用化に至った――が、まぁ、それは別にど うでもいい話しか)
パソコンの画面を見せながらそのつるりとした仮面を揺らして肩で笑っていた。
「なるほど、情報生命体、ね。まるで死を超越したような話しだ」
不敵な笑みをつくって見せたが、彼の様子からは意に介すものは見られない。なんともし甲斐のない相手だ。
思うより早く、新たな文面が打ち出された画面をスリーは見せてくる。あぁ、少し違う。うまく表現できないもどかしさが同時に僕を襲う。だが、それは今どうでもいい。新たに示されたそれは、僕の疑問を更に加速させたからだ。
(こうやって、僕が色々もどかしさ抜きに話しができるようになったわけだし、この世界について少し説明しておくよ。いいかい、僕との出会いはまだ序の口。プロローグに過ぎないんだからね)
念を押されるように一度文が切られ、彼は僕が頷くのを待っていた。それを僕はあごをしゃくって促した。
やれやれ、と言わんばかりに肩をすくめて見せたスリーは、再び軽快にキィ・ボードを叩き出した。
少しすると、コリコリと頭を掻いてみせ、おもむろに取り出したケーブルを膝上のパソコンとラブ・ソファ正面の40インチテレビとにつなぎ、これまた何処か らか取り出したリモコンで操作しはじめた。すると、彼がパソコンに打ち込んだ文がテレビに投影され、彼はテレビ画面を見ろとばかりに指さし僕を促した。
はいはい、面倒になったのね。
(そう、いちいち打って見せてじゃぁ面倒――というか、さっきとあまり変わらないからね。じゃぁ、色々説明をするとしますか)
何か、性格が変わったというか、新たに発見したというか……ずいぶんいきいきしているな、と思いつつ、画面を見ることにした。
(はじめに言っておくけど、ここで話したことは全て現実だし、それに直結しているということの重みを知っておいて欲しい。何を言っているかわからないだろうけど、今はそれだけを記憶しておいてくれ。あぁ、いいよ、返事はしなくて。このまま話しは進めるから)
(ま ず、この世界は、というか、この場所は全ての運命と歴史と時間のはざまの世界。ナイン、来たばかりの君にはまだ理解できないだろうが、この世界は重層構造 でできている。多重世界、平行世界と言い換えてもいい。君の好きな表現を使ってもらって構わない。とにかく、君が今まで生活してきた世界とは似て非なる世 界が無数に存在しているんだ)
(そして、この全ての運命と歴史と時間のはざまの世界でつながって
いるんだよ)
瞬間、僕 は雷にうたれたような衝撃を――この身に感じることはなかった。ただ、かるほどね、と思っただけであった。通常の人間だったらどうなんだろうな――と思わ ないでもないが、まぁ、僕はこうなのだから仕方ない。だが、この文章以上の衝撃を僕は身を持って体感することとなった。
(つづく)
アルファポリスの
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