第06号 幼馴染
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週刊「帰還限界点 連載小説」
☆============================= 第06号 (2008/09/28)=====
『泥人形』(第2話 -2- 幼馴染)
「咲夜……」
乙夏と七月は、磔の咲夜に近付こうとしたが、すぐに例のロ
ボットに牽制された。お前達もああなりたいか、とでも言うよ
うに。
周囲の人間はどうすることもできず、ただ目前の非現実的な
現実を傍観していた。
乙夏は逆上して、ロボットの脚を蹴った。もちろん、無意味
に等しい。それどころか、自分の脚を痛める結果となった。
「くそおっ……」
「……!
乙夏、後ろ…」
七月の声が震えている。こんな彼女を見るのは、おそらく初
めてであろう。
乙夏は七月の言う通り後ろを振り向いた。 そこには、要石
の脇のロボットと同系の、ロボットを一体従えた乙夏を見据え
る男。
その冷たい眼に、乙夏は背筋が凍るように感じた。
だが、彼が驚くべき点は別にあったのだ。
「甲斐造(かいぞう)……?」
そう、そこに現われたのは、乙夏も七月もよく知っている男
だった。
一つ年上で、幼なじみの〈伊達(だて) 甲斐造(かいぞう)〉。
彼がここにいること自体は、何の不思議もない。彼のバイト
先は、駅前のレンタルビデオ店だし、それ以外の用事だって十
分考えられる。
おかしいのは、彼に従えられたロボット、そして……見たこ
ともない冷たい眼だった。
「甲斐造……?」
様子がおかしいのは一目瞭然であった。
正直言って訳が分からない乙夏は、混乱の元三号(一号は磔
の咲夜、二号は謎のロボット)である甲斐造の名をしきりに呼
んだ。
この事態の不可解さは、乙夏のキャパシティをゆうに超えて
いた。
そんな乙夏を気にも止めず、甲斐造は彼らの方に近付いてき
た。悠然と、玉座に向かう王のように。
乙夏の目前まで来た甲斐造は、唐突に乙夏の前に右腕を突き
だし……
「がっ……」
次の瞬間、乙夏の足は地面を離れていた。決して逞しい方で
はない、むしろ華奢と言った方が正しいような甲斐造の右腕一
本で首を絞めあげられていた。
女のように伸ばされた爪が、首筋に食い込んでいる。
息が、ほとんど出来なかった。
「おと……!
やめて、やめてよ、甲斐造!」
七月の叫びとともに、どさっ、と地面に落ちる乙夏。尻餅を
つき、激しく咳き込む。そんな乙夏の上体を支えながら、七月
は甲斐造を睨んだ。非難と、畏怖と、両方の交じった眼で。
しかし甲斐造は、七月を見ることもせず、彼女達の背後の二
体のロボットに向かって、言った。
「殺せ」
いつもよりもずっと下げられたトーンの声。怖いくらいに、
無感情だった。
甲斐造はすぐにきびすを返し、去っていった。乙夏はその背
中に何か言い掛けたが、まだ喉が使える状態には戻っていなか
った。
なぜか、その時意識は現実から遠退いていて、彼は自分の身
に降り掛かろうとしている危険にまったく気付いていなかった。
「乙夏!」
聞き飽きる程聞いた女の、自分を呼ぶ声が遠くなっていく。
七月の声が……
「乙夏。
……おとか……
おと……」
『馬鹿!
ぼさっとしてんじゃねーよ、てめえ!』
頭の中に直接響くような声とともに、彼の意識は途切れた。
(つづく)
☆お知らせ==============================================
〈伊達甲斐造〉〈蘇屍體狂言楽団ルイス〉〈姫河織〉
〈鈴木洋介〉〈雨宮瞬壱〉〈志田あゆみ〉を追加です!
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えぇ、ホント、まじめにお願いします。
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ですが、若干のルールはあります。
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雨宮瞬壱
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乙夏と七月は、磔の咲夜に近付こうとしたが、すぐに例のロ
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うに。
周囲の人間はどうすることもできず、ただ目前の非現実的な
現実を傍観していた。
乙夏は逆上して、ロボットの脚を蹴った。もちろん、無意味
に等しい。それどころか、自分の脚を痛める結果となった。
「くそおっ……」
「……!
乙夏、後ろ…」
七月の声が震えている。こんな彼女を見るのは、おそらく初
めてであろう。
乙夏は七月の言う通り後ろを振り向いた。 そこには、要石
の脇のロボットと同系の、ロボットを一体従えた乙夏を見据え
る男。
その冷たい眼に、乙夏は背筋が凍るように感じた。
だが、彼が驚くべき点は別にあったのだ。
「甲斐造(かいぞう)……?」
そう、そこに現われたのは、乙夏も七月もよく知っている男
だった。
一つ年上で、幼なじみの〈伊達(だて) 甲斐造(かいぞう)〉。
彼がここにいること自体は、何の不思議もない。彼のバイト
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ともない冷たい眼だった。
「甲斐造……?」
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この事態の不可解さは、乙夏のキャパシティをゆうに超えて
いた。
そんな乙夏を気にも止めず、甲斐造は彼らの方に近付いてき
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女のように伸ばされた爪が、首筋に食い込んでいる。
息が、ほとんど出来なかった。
「おと……!
やめて、やめてよ、甲斐造!」
七月の叫びとともに、どさっ、と地面に落ちる乙夏。尻餅を
つき、激しく咳き込む。そんな乙夏の上体を支えながら、七月
は甲斐造を睨んだ。非難と、畏怖と、両方の交じった眼で。
しかし甲斐造は、七月を見ることもせず、彼女達の背後の二
体のロボットに向かって、言った。
「殺せ」
いつもよりもずっと下げられたトーンの声。怖いくらいに、
無感情だった。
甲斐造はすぐにきびすを返し、去っていった。乙夏はその背
中に何か言い掛けたが、まだ喉が使える状態には戻っていなか
った。
なぜか、その時意識は現実から遠退いていて、彼は自分の身
に降り掛かろうとしている危険にまったく気付いていなかった。
「乙夏!」
聞き飽きる程聞いた女の、自分を呼ぶ声が遠くなっていく。
七月の声が……
「乙夏。
……おとか……
おと……」
『馬鹿!
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頭の中に直接響くような声とともに、彼の意識は途切れた。
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