第63話 『壊れていくこの世界で……』(最終話 -1- 怒声)
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週刊「帰還限界点 連載小説」
☆===========================================第63号=====
『壊れていくこの世界で……』(最終話 -1- 怒声)
東城神詞が死んだ。
その現実は皆の心に動揺の風を吹き込み、一瞬その動きを止
めさせた。それは、神敵サタンを目の前にして自殺行為であっ
た。しかし、彼は動かなかった。それどころか、完全に硬直し
ており、吹き抜けホールの天井に開いた大穴を見上げていた。
「うごかねぇなら、攻撃した方がいいんじゃねぇか?」
直情径行気味の石崎にしては慎重な発言をしている。流石に
同僚の死を前にすれば慎重にならざるを得ないが、それでは石
崎の持ち味を殺している事になっている。彼だけではない。建
の器用さも、倉本の大胆さも殺され、戦いに消極性が見え始め
ていた。
そう、新堂らはサタンと対峙しながらも、Aシリーズの攻撃
をかわし、また逆撃を加えてその場を凌いでいたのだ。
よくも七人で凌いできたものだ。
「あぁっ!もう! 休みの梨華ちゃんたちが羨ましい!」
あずみは言いながらも、剣状に具現化されたエーテル・ブレ
ードを振るいAシリーズを屠る。だが、言葉とは裏腹に剣の鋭
さは皆と同様明らかに落ちていた。
だが一人、相も変わらず落ち着き払った人物が、一体、また
一体と敵を残骸へと変化させ続けていた。
『わかってはいるが、人の死ぬ姿は嫌なものだな……』
新堂は思わず東城の名を呼んだ自分を振り返りながら剣を振
るっていた。
しかし、そんな余裕もAシリーズの一体がサタンを攻撃した
事で一瞬にして消え去った。
ジッ!
雷電が弾けたような音と同時に、サタンに近付いたAシリー
ズの一体が球状にえぐれたのだ。
「あっぶねぇ~
攻撃するとああなるのかよ……」
努めて明るく言ったつもりの石崎だったが、声は完全に裏返
っていた。
同時に、サタンは東城に良く似た声で呟いた。
「わかりました、母上。撒布します。」
「!」
気付いたのは新堂だけであった。弾かれたように新堂は号令
を飛ばした。
「全員集結! 防御障壁レベルMAX!」
遅れた者はいなかった。ホール中央に固まり、円形に陣を敷
くと両腕を突き出し、更に肩部装甲からアームとシールドを出
現させると、全員を包むように半球状の赤い障壁〈ファイヤー
ウォール〉を出現させた。
FW(ファイアーウォール)の完成と一秒の間も置かず、サタ
ンを中心に何かが撒かれた。
「我に跪け! 神に踊らされし愚昧な者よ!」
それは、目に見える物ではなかった。いや正確に表現するな
ら、肉眼で認識するには余りに小さな物体であった。
「ナノマシンの撒布?
……FDV666!」
新堂以外で最初に気付いたのは建であった。
そう、ナノマシンにFDV666ダウンロードプログラムを
内蔵し、Aシリーズのボディハッキングをさせたのだ。
ボディの統制を切断され、Aシリーズの核であるAAが書き
換えられるまでにさしたる時間を要さなかった。
今、この場で三つ巴にあった勢力の二つが統合した瞬間であ
った。
「どうするんですか、新堂主任。
このままではこちらが不利ですよ。」
建の意見は最もであった。そして、新堂に策がない訳ではな
かった。だが人道に反する策であった為、一瞬新堂の思考を止
めさせてしまった。
「何を今更……」
新堂は次の言葉を飲み込み、あずみに指示を飛ばした。
「東城の装備にコード0を発信しろ……」
さしものあずみも、この言葉に表情を凍らせた。
「そんな……自爆コードを出したら、東城君の遺体が傷ついて
しまいます!」
しかし、あずみより速く叫んだのは倉本であった。だがそれ
も石崎の叱責で掻き消される。
「倉本! どうせ、荷物になるだけだ。
そんなモンより自分の心配をしやがれ!」
石崎のこの言葉に激しく反応した倉本は、完全に頭に血が昇
っていた。
「東城君の遺体を〈そんなモン〉ですって!
両手が開いたら覚えていなさい!
今日こそ貴方の頬が腫れ上がるまで殴ってやるわ!」
このやりとりにウンザリした建は、落ち着き払って、尊大に
言い切った。
「いい加減にしてください。
痴話喧嘩は後にしてほしいですね。天国なり地獄なりでゆっ
くりとね。」
「ばかぁぁぁぁっ!」
咆えたのはあずみであった。
「いい加減にするのは、皆一緒だよ!
今、ボク達はまとまらなきゃならないんだ!」
おそらく、新堂と石崎以外ははじめて見たであろう、あずみ
の怒鳴り声だった。
そして次の瞬間、サタンの足元に崩れ落ちていた東城のE‐
9スーツを中心に、音も無く大きなクレーターが出現した。
「真の気持ちを汲んであげてよ……」
そしてクレーターの中心から衝撃波が疾り、全てを薙ぎ払っ
たのだった。
(つづく)
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をかわし、また逆撃を加えてその場を凌いでいたのだ。
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ードを振るいAシリーズを屠る。だが、言葉とは裏腹に剣の鋭
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だが一人、相も変わらず落ち着き払った人物が、一体、また
一体と敵を残骸へと変化させ続けていた。
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るっていた。
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事で一瞬にして消え去った。
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ズの一体が球状にえぐれたのだ。
「あっぶねぇ~
攻撃するとああなるのかよ……」
努めて明るく言ったつもりの石崎だったが、声は完全に裏返
っていた。
同時に、サタンは東城に良く似た声で呟いた。
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「!」
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を飛ばした。
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