第71号 『Heaven-Side』(プロローグ -1- 天獄)
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週刊「帰還限界点 連載小説」
☆===========================================第71号=====
『Heaven-Side』(プロローグ -1- 天獄)
かつて、人が集い、それが幸せと気付かぬまま過した京神ビ
ルにあの頃の面影はなく、硝子と瓦礫が無造作に打ち捨てられ
ていた。
人の存在を許さぬ空気を閉じ込めたかのように、室内は静まり
かえっている。
しかし、一発の乾いた銃声が、永く停滞していた室内に動き
をもたらした!
硝子を踏み砕き、駆け出す足音。
反響する銃声と刹那の間で現れる床の、壁の弾痕。
ひとつとして命中することなく、銃弾で挨拶をかわした三人
は、互いのこめかみに銃口を圧し当て対峙した。
三つ巴…
互いに身動きがとれないなか、彼らはお互いが何者であるか
を認識した。
わかっていた事だが、その事実に愕然としていた。少なくと
も一人は……
何故こんな事になってしまったのか……
哀しい風が心に吹くばかりで、誰にもその答えを返すことは
できなかった。
「久しぶりだなぁ、オイ……」
「うん、久しぶりだね……」
「……」
睨み返すことで返事をした眼鏡の男に、短髪の男がニヤけた
顔を造り、低い笑いを漏らした。
「くく……テメェは、またそれか、シュイ……
全く、いつも餓鬼を叱るような目つきで見下しやがって、気
にイラネェ……」
シュイと呼ばれた男は、もう一人の線の細い男に銃口を向け
たまま口を開く。
「まさか、こんなカタチで再開するとはな……」
「ボクも驚いたよ。
星矢もシュイも、神敵になっているとは思わなかったよ」
線の細い男がシュイに続けるが、星矢と呼ばれた短髪の男は、
一言で切り捨てる。
「テメェは黙ってろ、羊介!
俺はシュイの野郎に話をしてるんだ。先に殺すぞ!」
物騒で穏やかな会話に、緊張の糸は少しずつテンションを上
げていく。
「……」
星矢は苛つきを隠そうともせず、シュイのこめかみに当てた
ままの銃口にむけ、更に力を込める。シュイは当てられた冷た
い銃口に痛みを感じながらも、それを感情には一切出すことが
なかった。それが星矢の苛つきを増幅させることを知りながら
もそうせざるを得なかった。
「あゆみは……」
ゆっくりとシュイが紡ぎだした言葉は一瞬三人の時間を止め
た。
「あゆみは、お前の事が――」
「云うなっっ!」
星矢が銃口をシュイのこめかみからはなし、拳銃のにぎりで
シュイの顔面めがけて振り下ろそうとした瞬間、弾丸は放たれ
た。
パン!
乾いた音が瓦礫と化した室内に響く。
「やっぱり、テメェが、最初に打ちやがった、な」
左目のあった部分から真紅の熱いものを噴出させながら、う
ずくまる星矢は怒りを言葉に乗せながら、一言ずつ吐き出した。
「ヒッ……だ、だって、君は――神敵じゃないか――」
声を怖れに震わせながら羊介と呼ばれた細身の男は引き金を
引き絞った拳銃を手に、星矢へ怖れから哀れみへと声色を変え
ながら見下した。
「テメェ、そうやって機械の身体になってようやく震えが止ま
ったってか、腰抜け!」
無造作に左目のあたりを拭い、星矢はそのまま獣のそれとな
った左腕を一閃させた。と同時に羊介は後方に飛び退く。拳銃
を持った右腕の表皮を引き裂かれ、無機質で出来た冷たい歯車
を覗かせながら。
「!――お前達――」
唯一、人の姿のままのシュイも数歩飛び退いてつぶやいた。
「お前達、本当に力を手に入れたのか――」
異形の姿を得た、かつての友と対峙したシュイは悟った。
もう、昔には戻れない事を……
いったい、如何なる現象によってこのような姿を手に入れた
のか。
いったい、彼らはどの様な関わりをもってこのような事態と
なったのか。
このシーンを一つの終着点として、物語を再び語り始めるこ
ととしよう。
(プロローグ 了)
(つづく)
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価格:¥ 1,995(定価:¥ 1,995)
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