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第72号 第1話 ドッペルゲンガー事件 -1- 発端

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    週刊「帰還限界点 連載小説」

☆===========================================第72号=====


『Heaven-Side』
(第1話 ドッペルゲンガー事件 -1- 発端)



時に20XX年。SSH(セブン・ストレータル・ヘヴン)
社の新世代オンラインゲーム暴走事件――通称ゴーレム事件が
記憶に新しい昨今、再びこの神代市に事件が起きようとしてい
た。

カッカッカッカッ……

軽快、というよりもその足音にはべっとりとまとわりつくよ
うな恐怖感を振り払うかのように一気に駆け出しているそれだ
った。いつもならある程度の人通りがあるはずの裏路地。立ち
並ぶオフィスから家路を急ぐ者や駅前の繁華街のネオンに誘わ
れて消えていこうとするサラリーマンの姿が、いつもならある
はずだった。
彼女はその違和感を全身に感じていた。何かが違う――そう
感じさせずにはいられない焦燥感が後から後からついてくるの
であった。

カッカッカッカッ……
カッカッカッカツ……

自分のヒールの音が響き二重にかさなって聞こえているだけ
と思っていたが、少しずつずれてきていることに気付いたとき、
一瞬にして心臓を掴まれたような感覚に陥った。
いつの間にか止めてしまった足。恐怖があっても走り出せな
いその感覚は、いつしか自分を追ってきているそれに対して、
振り返らなければならないという強制力を衝動として与えられ
ているようだった。

彼女はゆっくりと振り返る……

影――

そこには自分の姿をした影が街灯に照らされ、短く足元にた
ゆたっているのみであった。何処か安心した面持ちになって、
気の所為だ……と決め付け前に振り戻った瞬間、彼女の前に彼
女の姿が飛び込んできた。

鏡に映したかのような、全く同じ姿をした女性の姿。真実そ
こに大きな鏡がいつの間にか置かれたのではないかと錯覚させ
るほど、自分自身そのものがそこに立っていたのだ。

「っ…………」

声にならない悲鳴を上げかけた瞬間、眼前の自分の口元が三
日月のように割れて赤い笑みを浮かべ、彼女の口をふさいでき
たのだ。
そこで、彼女の意識は途切れていた。





(つづく)

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