何のことやらと云う方もいらっしゃる事だろう。
ハッピーとは、職場で飼っていたウサギの名である。
実は、このところ調子が非常に悪く、二週間ほど通院治療を受けているさなかであった。
朝、職場である病院、その敷地内にあるショートケア棟の室内に僕は足を踏み入れる。
男子更衣室もそこにあるため、毎日の事だ。そしてここ最近の日課になっていたハッピーの生存確認。
管理職なんだからゆっくり行けば良いのかもしれないが、ほぼ毎日一番に入るのは僕になっていた。まぁ、やや席朝族なものだから仕方ないが。
と、そんな理由もありつつ、彼女のケイジを覗き込むと、いつものガサゴソ音がしない。
目を開けたまま、手足はピンと伸ばして、硬くなっていたのだ。
ああ、とうとう逝ってしまったんだね。
不思議と悲しさはなかった。
突然の事ではあったが、予期してはいた。
斜視に左半身の麻痺? 餌を見つけられない。見つけても首が動かせないため、餌を口にする事ができないのだ。
食事介助をしてどうにか食べる始末。しかも全盛期の半分量以下だ。
時間の問題だった。
思えば、彼女を捕まえたのは僕だった。
あの時も年末だった。
2005年の12月。クリスマス会が終わった頃だろうか。園芸倉庫の床下にいたのを投網で捕まえたのは。
正月休みに入るから家に連れ帰って、猫が飼いたいと言って聞かなかった当時の彼女(誤解の無いように云うが今の妻だ)に世話をさせて、テストしたり。
そして、新年会で患者さんに、ハッピーニューイヤーと幸せを運んでおくれ、でハッピーと命名されたっけ。
そう、患者さんに慕われ愛されていたんだね。
新棟にリハ室が移ったことでショートケア棟になったもとリハ室の主になっても患者さんからよく「どうしてる?」「また抱かせて」とよく言われるのだから。
そう、愛されていたのはショートケアの利用者さん達からもだ。
これから柿の木の下に埋葬すると話したら、総出で集まってくれたのだ。
入院中の患者さんも噂を聞きつけ、何時の間にやら結構な人数に。
凄い事だと思った。
みんなに、本当に愛されていたんだね。
そして、君の生きた証は病院の柿の木。それ姿を変えて、来年の秋には実をつけて、僕らの血肉に帰ってくるのだろうね。
また、会う日まで、今はしばしの別れ。
ありがとう、ハッピー。
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